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最高裁判所第二小法廷 平成4年(オ)78号 判決 1996年3月08日

上告人

原田咲子(X1)

原田徹(X2)

右両名訴訟代理人弁護士

渡辺馨

稲村五男

荒川英幸

浅野則明

高山利夫

川中宏

村山晃

森川明

村井豊明

久保哲夫

飯田昭

岩橋多恵

佐藤健宗

藤浦龍治

近藤忠孝

被上告人

京都府(Y)

右代表者知事

荒巻禎一

右訴訟代理人弁護士

香山仙太郎

右指定代理人

後藤廣生

竹村繁

定榮誠

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

一  上告代理人渡辺馨、同稲村五男、同荒川英幸、同浅野則明、同高山利夫の上告理由第一について

原審の適法に確定した事実関係の下においては、京都市屋外広告物条例(昭和三一年京都市条例第二八号。平成元年京都市条例第六〇号による改正前のもの)二条ないし五条の各規定が憲法二一条に違反しないこと及び右各規定を原田昭次郎の本件貼付行為に適用し処罰しても憲法二一条に違反しないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和四一年(あ)第五三六号同四三年一二月一八日大法廷判決・刑集二二巻一三号一五四九頁)の趣旨に徴して明らかである。これと同旨の原審の判断は正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。

二  同第二及び第三について

原審の適法に確定した事実関係の下においては、所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は採用することができない。

三  同第四ないし第六について

原審の適法に確定した事実関係の下においては、京都府警察山科警察署の司法警察員が、昭和六二年七月二二日午後二時五〇分ころ山科署に引致された原田を、同月二四日午前一一時ころ検察官に送致するまでの間にわたり留置した措置について、国家賠償法一条一項の違法性はないというべきであるから(最高裁平成四年(オ)第七七号同八年三月八日第二小法廷判決参照)、上告人らの本件損害賠償請求はすべて理由がないものとして、これを棄却すべきものであったといわなければならない。したがって、論旨は、独自の見解に立って原判決を論難するか、又は原判決の結論に影響のない事項についての違法を主張するものにすぎず、採用することができない。

よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官河合伸一の意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

裁判官河合伸一の意見は、次のとおりである。

私は、上告人らの本件上告を棄却すべきものとする多数意見の結論には同調するが、その理由として説示するところに賛同し難い点があるので、一言しておきたい。

多数意見は、上告理由第四ないし第六に対する判断において、山科署の司法警察員が、昭和六二年七月二二日午後二時五〇分ころ山科署に引致された原田を、同月二四日午前一一時ころ検察官に送致するまでの間にわたり留置した措置につき、国家賠償法一条一項の違法性はないと判示する。しかしながら、捜査機関が昭和六二年七月二三日午後五時ころ以降も原田の留置を継続した措置について、被上告人には国家賠償法一条一項の責任があるものというべきである(前掲第二小法廷判決における私の反対意見参照)。もっとも、原田に対する損害賠償額は、原審が認容した限度において相当と認められる。

したがって、多数意見が被上告人の国家賠償法一条一項の責任を否定した点については多数意見に同調することができないが、上告人らの本件上告を棄却すべきものとする点では多数意見と結論を同じくするものである。

(裁判長裁判官 福田博 裁判官 大西勝也 根岸重治 河合伸一)

【上告理由】〔略〕

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